バイオトイレとは? 特徴と仕組みを解説します。
環境保全への取り組みや、限りある資源の有効活用が叫ばれて久しい昨今。海外では人間のし尿を有用な資源として捉え直し、再利用する考え方が広がっています。そしてその手段の一つとして、幅広い業界から注目されているのが「バイオトイレ」です。従来のトイレとは何が違うのか、利用によってどんなメリットがあるのか。いまだからこそ知っておきたいキーワード、バイオトイレをご紹介します。
目次
そもそも、バイオトイレとは?
バイオトイレとは、人間の排せつ物を微生物の働きによって分解・処理するトイレのことです。処理された排せつ物は、農業や園芸用の肥料として活用することができるため、コンポスト(堆肥)トイレとも呼ばれています。
従来のトイレと異なる最も大きな特徴は、水を使わずに排せつ物を処理できること。そのため、汚水による土壌や水質への影響を最小限に抑えることができます。また、トイレの嫌な臭いが発生しにくいこともポイントです。
環境保全への取り組みが進む欧米諸国では、国定自然公園や沿道施設をはじめ、一部地域の別荘などにも活用されています。日本においても、水が使えない場所や下水道設備がない地域などに設置されることが増えています。
自然のチカラで分解処理。バイオトイレの仕組み
バイオトイレの仕組みは、実は非常にシンプルです。人間の腸内バクテリアや、自然界の微生物の働きを利用することによって、排せつ物を二酸化炭素と水に分解・処理します。そのため、便器の下に「おがくず」や「木チップ」、「そばがら」などが敷き詰められた処理槽を設置し、排せつ物が直接落ちていく設計になっています。微生物はそれらを菌床に、し尿を分解していきます。
人間のし尿の90%以上は水分でできているため、まずは菌床(おがくずやそば殻等)に水分を吸着させて蒸発しやすい環境をつくります。その上で、ヒーターを使って温度管理を行いながら、槽内のスクリューによって撹拌し、空気(酸素)を取り込みます。適切な温度と十分な空気を保つことによって、好気性微生物の活動を活発化させていきます。
摂氏50℃を超えるころから徐々に水分の蒸発がはじまり、最終的に排せつ物の量は元の10%以下になります。こうして分解処理されたし尿は、自然由来の有機肥料へと生まれ変わります。
バイオトイレの、メリットとデメリット
メリット
水がなくても利用できる
排せつ物の処理に水を必要としないため、水の確保が難しい山岳地域や離島などにも設置が可能。また、寒冷地での使用や断水時にも対応します。
汲み取り作業なし
一般的な汲み取り式の簡易トイレとは異なり、汲み取り作業もが不要です。人的な負荷を軽減するとともに、幅広い場所への設置を可能にします。
悪臭が抑えられる
トイレの悪臭がほとんど発生しないため、快適なトイレ環境を維持することができます。近年では、建設現場などへの導入も期待されています。
堆肥を生成できる
し尿を資源に変えることができます。分解時には摂氏50℃以上の発酵温度に達するため、大腸菌や寄生虫なども死滅。安心して活用することができます。
デメリット
電源とメンテナンスが必要
バイオトイレはその構造上、基本的に電力が必要になります。また、おがくずを使用するタイプでは、年に数度の交換が求められます。
コストが比較的高い
建設現場などで利用されている一般的な簡易水洗式の仮設トイレに比べると、ランニングコストが高くなってしまいます。
一日の使用制限がある
連続で大量のし尿が投じられてしまうと、分解処理しきれない残りかすが蓄積し、場合によっては悪臭が発生することがあります。
さらなる進化を目指して。バイオトイレ「バイオR21」
バイオトイレは様々なメリットをもたらす一方で、まだまだ改善の余地を抱えています。しかしその性能は、日々進化しています。その一つに挙げられるのが、「バイオR21」。し尿はもちろん、生ゴミや廃食用油も分解処理できるように開発された一歩進んだバイオトイレです。
最大の特徴は、処理槽に投入するおがくずに替えて「そば殻」を採用し、特許技術の「好気性バクテリア(特許第4105563号)を初期投入することです。これによって、おかくずを使用するモデルに起こりやすかった油成分の不完全分解による悪臭や、年に数度のおかくずの交換の手間を解消。機能性を高めつつ、メンテナンスの手間を省いた自己処理型のバイオトイレとなりました。
水洗でもなく、汲み取りでもない、微生物処理によるバイオトイレ。その利用の拡大は、水質汚染の軽減と節水につながるだけではなく、これまで廃棄物になっていたし尿を有用な資源に変える一助となり、循環型社会の実現に大きく貢献します。