尿内有価物分離装置
特許第4025244号

尿内有価物分離装置は、尿からリンや窒素などの有価物を効率よく連続的に分離回収するための装置です。

尿内有価物分離装置の開発

 尿内有価物分離装置の開発は国立研究開発法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業の研究成果である尿内有価物分離装置に係る実施権を弊社に許諾されたものです。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)は、知の創造から社会還元とそのための基盤整備を担う我が国の科学技術の総合的機関です。科学技術基本計画の実施において、中核的な役割を担う機関として我が国のイノベーション創出の源泉となる知識の創出から、研究成果の社会・国民への還元までを総合的に推進するとともに、その基盤となる科学技術情報の提供、科学技術に関する理解増進、戦略的国際活動等を推進しています。

実験装置

特許について

出願年月日
平成15年6月6日
特許番号
特許 第4025244号
発明名称
尿から有価物を連続的に回収する方法と装置
発明者
松井三郎 (京都大学教授)
津野洋 (京都大学教授)
清水芳久 (京都大学教授)
松田知成 (京都大学教授)
長坂俊樹 (前澤工業株式会社)

尿内有価物分離装置開発の背景

 弊社ではバイオトイレの欠点である使用制限を補うために、JSS(重量センサーシステム)とセパレート便器を使用したSBS(し尿分離システム)を併用しています。このシステムは使用量が急増してバイオトイレの処理能力をオーバーした場合に、自動(手動)にてオーバー分の尿のみ専用タンクに分離する仕組みになっています。

 また、微生物処理の能力を上げるため、信州大学農学部と共同開発した好気性バクテリアを初期投入しています。これにより、悪臭が上がることもなく、基本的に菌床の入替作業が必要なくなり、保守メンテナンスの負担が大幅に軽減されました。バクテリアの微生物処理には水分・酸素・温度のバランスが大切になってきます。上記のシステムを併用する事で処理槽の中を微生物処理に適した環境に保つことができます。大便はバイオR21の処理槽内にて、60°C前後の熱を加えることで、有害菌のいない安全な土壌改良材として大地に戻すことができます。

 これまで、し尿分離した尿の処理をどのようにするかが大きな課題でした。トイレの使用量が少ないときに手動にて処理槽に戻すか、エコロジカルサニテーションの思想に基づいて優良な液肥として使用するとしていましたが、山小屋や市街地の公園のように簡単に処理できない場所では対応が難しく、この装置の開発が急務とされていました。

 好気性バクテリア・セパレート便器・JSS(重量センサーシステム)・SBS(し尿分離システム)・尿内有価物分離装置・雨水手洗い装置、この一連のシステムを活用する事で、し尿を完全に分解・分離・処理して、環境に最も適した自然循環型のバイオトイレが完成します。し尿を廃棄物として処理するのではなく、資源として大地に戻すという、弊社の目的と合致した地球循環を達成することができます。

尿内有価物分離装置の概要

 セパレート便器を使用した、し尿分離トイレで、尿を分離回収することにより、病原性微生物による汚染問題を回避し、有価物の大部分を含む尿から、リンはMAP(リン酸マグネシウム)の沈殿として、また、窒素はアンモニア性窒素として、効率よく連続的に分離回収することができます。

 タンクに分離された尿は、一定期間貯留することにより、尿素の分解と共に発生したアンモニアにより、pHが9.2付近まで上昇し、アンモニアが散逸しないので、アルカリを添加することなくマグネシウム塩を加えることで、MAP(リン酸マグネシウム)を回収できます。

 また、反応槽から分離された尿を空気によるバブリング処理によって、アンモニアガスを回収するアンモニア回収槽を備えたことを、特徴としています。

 尿中には、窒素・リン・カリウムといった有価物が含まれているのに加え、大便に含まれているような病原性の微生物が存在しません。そのため、尿は資源として安全に利用することができます。尿中に含まれる有価物を回収しないでいると、資源の有効利用が図れないばかりか、さらには、尿が合併浄化槽・下水処理されて河川に流入することにより高負荷となっている問題や、閉鎖性水域の富栄養化問題が存在しています。また、河川から海に流れ込んだ栄養素は、やがて深海に沈下して二度と利用できないものになってしまいます。

SBS(し尿分離システム)と組み合わせることで尿内有価物分離装置の力が大きく発揮されることになります。

し尿分離システム